沖縄で横につながろう、フラットな暮らし方! 「那覇市母子生活支援センター さくら」【施設長 當眞郁子さん】
那覇市に住んでいる母子家庭の生活環境改善の為の支援センター「さくら」さん。 母子家庭の力強い味方です。素晴らしい取り組みを、いくつも行っています。
この「母子生活支援施設」という言葉。 わかりやすく言うと… 配偶者のいない女子、またはこれに準ずる事情にある女子とその児童を入所させて保護するとともに、自立の促進の為にその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設です。
【児童福祉法第38条】 特に「放課後児童クラブ、夜の子どもの居場所、病後児保育」、が人気とのこと!
今回は、施設長の當眞郁子さんに「夜の子どもの居場所」を中心にお話を伺ってきました!
「さくら」さんの基本理念は2つあります。
①母の良き伴走者(パートナー)として、ともに歩み、ともに成長します。
②子どもの最善の利益を基本として、生きる力(自尊心)を育みます。
「さくら」さんで行っている事業内容は、大きく6つあります。
①こどもショートステイ… 諸事情により、児童の養育が困難になった時など、一時的にお預かり。
②病後児保育… 病後(病気の治りかけ)にあるお子さんの保育が困難な場合に看護師や保育士等の専門スタッフが 家庭的な雰囲気の中でお預かり。
③緊急一時保護… 諸事情で緊急一時的に母子を保護。
④はるはうす相談室… 子育てや家庭の悩み相談を、専門相談員が受ける。
⑤放課後児童クラブ… 学習支援をメインにした学童保育。
⑥夜の子どもの居場所… 平日の夜間、祝祭日にお子様のお預かり。
【1】これらの取り組みをしようと思ったきっかけはなんでしょうか?
利用者様のニーズがあったからですね。4年前くらいから言い続けてやっと事業化したものです。スタートするなかで改善できた点もいっぱいあります。
たとえば病後児保育ですが、これはカゼなど治りかけのお子さんを預かる取り組みです。病後(病気の治りかけ)にあるお子さんの保育が困難な場合に看護師や保育士等の専門スタッフが 家庭的な雰囲気の中でお預かりをします。当初は利用者さんから、利用するたびに利用料2000円を取っていました(那覇市の規定)。
しかし、この金額が払えない家庭もあります。ですので、母子会への入会(年間1000円)を条件に、母子家庭の方は無料。賛助会員の方は1000円。という事で利用者も増えています。
【2】どのような方が利用されますか? また利用の条件はありますか?
「夜の子どもの居場所」というのは、夕方から夜にかけて子どもを預けることができる場所のことです。例えば、親御さんが残業などで家にすぐ帰れないとき、子どもさんが独りでお家でいると不安になるときもあるでしょう。
保育園も夕方6時に終わりますし、すぐには、実家や近所で預かってもらえない場合もあると思います。 そんなとき、当施設の「夜の子どもの居場所」が利用できます。温かいご飯があり、たくさんの本やおもちゃ、お庭にはトランポリンもあります。大学生のお兄ちゃんやお姉ちゃんがいっしょに遊んでくれて、宿題も見てくれます!
下校時から21時まで利用できます。
【利用できる条件】…那覇市在住の2歳 ~ 12歳(小6)まで(兄妹の場合は、中学生まで)
【時間帯】…平日:下校時 ~ 21時まで 土日祝:9時 〜 17時
【小学生】お迎え→宿題→夕食→入浴→送り
【保 育】お迎え→入浴→夕食→静的遊び→お迎え
※全メニューを行う必要はありません
いろんな方が利用されていますよ。おのずと生活保護世帯、非課税世帯、母子世帯の利用が多くなっていますね。保育所5名、学童15名、合わせて毎日20名くらいお預かりしています。28年度の7月から始めました。29年度は子どもたち4665名が利用しました。
利用しやすいのには理由があると思います。それは利用の条件が厳しくないこと。利用は無料ですし、提出する書類もありません。最初に1度来所してもらって面談、登録していただくのみでOKです。
特に人気なのは食事です。そして、日替わりの和食中心のメニューがとっても充実しています! きっかけは、教育委員会から依頼があったことです。「もうすぐ夏休みになるが、1日の食事が給食のみという子たちは、困ってしまう。なにかできないだろうか?」 当初10名くらい預かった子たち。夏休みに那覇市辻や小禄まで通ってお迎えしました。
朝9時に迎えて、全員を「さくら」に到着させると11時! あっという間に12時(笑)! ご飯のあとはお勉強、夏休みの宿題も、大学生のお兄ちゃんお姉ちゃんが見てくれます。 夕方はお風呂。パジャマに着替えて、帰ったらすぐ眠ることができるようにスタンバイします。
夏休み明け、校長先生から「子どもたちが目に見えて元気になった!」と感謝の声がありました。生活のサイクルが順調になると、子どもたちも明るく、また、育ちも順調になります。私たち自身がこの素晴らしい変化に驚かされましたね。
今の課題は、送迎に時間がかかることですね。那覇は広くて起伏が大きい土地。市内に複数の施設ができることを希望しますね。
【3】今、子どもたちや親御さんが抱えているしんどさにはどのようなものがありますか?
「さくら」に来て利用されている親御さんたちも、どちらかといえば被害者で、当たり前の生活環境を与えられないまま母親になっています。まさに貧困の連鎖の現象だと思っています。
そんなみなさんが「当たり前の生活環境」を整えましょう!と言われても、なにをどうしていいか「わからない」のです。そして、その思いを「自分が至らないから…」と責任を感じたり、恥ずかしいと感じて、「こうしたい!」と言葉にすることを自分から抑えてしまう場合もあります。
当たり前の生活を送ること、そのことに「しんどさ」を感じているように思えます。 沖縄はDV(配偶者暴力、夫婦間暴力)も多いし、自分のお母さんとの絆が薄い若いお母さんも増えています。若年母子がここに通っているんです。
絆や「ゆいまーる」が、昔はあったと思いますが、今は壊れてしまったのかな? ここ「さくら」は、退所した方からの相談も多いです。フードバンクで集まった食料を渡す時も多いんです。だから、利用者さんから「実家みたい」と言われることも多いです。「お米、持っていきなさい」とかね(笑)。ほんと、実家ですよね!
まさに貧困の問題。連鎖の結果と思います。ですので当所の使命として、この流れを止めようとスタッフみんなで努めています。今の若いお母さんはすごく生きづらいですよ。ほったらかされてる。自分がそうされてきてない場合が多いから、子育てに何重にも壁があるんです。
【4】「子育ての問題は、お母さん本人の責任にされてしまいやすいんですね?」
子育てに苦しむ若いお母さんは、自分が被害者なのに加え、自分から助けての声をだすことをセーブする、2重の苦しみを抱えています。状態は深刻。サバイバーが多いです。
1、2歳のころに、自分の母親との愛着行動につまづいてしまっているので、大人になってからの人間形成がむつかしい面があります。
「さくら」は、細かい気づきができる専門職集団なので、相談されたお母さんの精神状態が良くなります。夜の子どもの居場所には、カウンセラーもいますので、ぜひ気軽に相談してほしいですね。
【5】利用された方の声にはどのようなものがありますか?
「夜の子どもたちの居場所」を利用するお母さんの保護者会の年2回15名のアンケート。 「居場所利用がなくなると困るので続けてほしい」 「子どもの食事も用意してくれて行事も楽しく取り組める」 「同じような境遇のお母さんに、ここを利用できることを知ってもらいたい」 との声がありますね。
そのほか、今までの相談では育児相談が多かったのが、最近は日常生活相談が多くなっています。掃除の仕方や、包丁の使い方などです。
子どもたちはもちろん、そのおかあさんへのケアも重要です。彼女たちに寄り添っていくことの大切さを感じています。 「子育て支援は親支援」だと信じて疑いません。
【6】なにか取り組めることはありますか?
この事業が長く続くことを願ってやみません。行政の財政事情で打ち切られたりすることが無いように、沖縄県全体の世論として一緒に声をあげていただきたいですね。 ボランティアで取り組みたいという声も多く大変ありがたいです。
その点でいえば、現在、「学生ボランティア」は少ないのではないかと思っています。なぜなら、今の学生もまた、奨学金で生活をまかなうギリギリの子が多いのです。
「さくら」では、学生アルバイトも、知識・経験を持つ人材として育てています。きちんとした賃金を保障し、将来の福祉を担う人材として大切に育てていくつもりで向き合っています。
【7】今後、センターで目指していることはありますか?
利用者のニーズに合った施設運営を維持するということと、「当たり前の生活環境」を提供していくことにこだわっています。なかでも人材育成は大きな課題ですね。今年度「さくら」では41名が働いています。夜の子どもの居場所には、スタッフが約10名勤務します。
近くの県立芸大の大学生の子などが多いですね。とても元気で優秀な学生たち。「大学っておもしろいよ」など、希望のある明るいお話をしてくれて頼もしい! そんな学生たちに対してきちんと教育したいという思いがありますね。
ただ、学生も、教育実習期間中などは「さくら」に来ることもむつかしい。やっぱり長期で勤務してくれる方も必要なんですよね。 情熱があって貢献したいという気持ちのあるかたであれば1日2日でもいい。もちろん有償なので、Wワークでおススメしたいほどです。
男性の参加ももちろんOK、子どもたちには、いろんな大人を見てもらいたいですからね。人材が不足しているのは特に保育士ですね。時給1,300円出していますが、なかなか人材確保はむつかしいですね。
随時見学可能なので、ぜひ見学に来てほしいです。 また、送迎のときの運転手さんも募集したいですね。今は職員が送迎していますが、専任の運転手さんがほしいです。「子育てタクシー」というタクシーがあるそうで、大変興味がありますね!
【8】「さくら」さんの情報はどこで知ることができますか?
いろいろな方に、「さくら」を知ってもらえるような工夫もしています。最近ではスマホで読み取れるQRコードをパンフレットの中に入れました。読んだ方が、すぐパッと、アクセスできるようになりました。
また、依頼された講演会にも、なるべく登壇して話すようにしています。最近は「貧困問題」で講師として呼ばれるようになりました。現場の声を聞きたいとのニーズがあるんです。ホームページで調べていただいたり、お電話をいただくことも多いです。
まずは、一度見学に来ていただくことがいいかもしれません。24時間常駐の守衛さんもいて、安心・安全な場所ですから、ぜひ気軽に遊びに来てほしいですね。
公益社団法人 那覇市母子寡婦福祉会
那覇市母子生活支援センター さくら
【住所】沖縄県那覇市首里鳥堀町4丁目99番地
【TEL】098-886-7018
【HP】https://naha-sakura.okinawa/