毎月楽しみな給料日。もらった瞬間はうれしいですが

給与明細を見てみると、税金や社会保険など色々なものが引かれてちょっと悲しい…。


「そもそもこの社会保険ってなんのために引かれているの?」

「きちんと支払っているけど、どんなときに役立つのかわからない」

そんな方も多いのではないでしょうか。


一般的に社会保険というと健康保険と厚生年金保険について指すことが多いですが、それ以外にも介護保険、雇用・労災保険など様々な種類があります。

今回はこの社会保険の種類の中でも労働保険の一つ、雇用保険について一般の方に当てはまる部分を説明していきたいと思います。

細かな制度・受給要件なども説明するとかなり長くなってしまうので、主要なものを除きある程度の特徴を抜粋して説明しています。


雇用保険の保険料

雇用保険の保険料は事業主と労働者双方で負担します。

保険料は支払われている賃金総額に対して

事業主が6/1000(農林水産・清酒製造業は7/1000、建設事業は8/1000)、

労働者が3/1000(農林水産・清酒製造業・建設事業は4/1000)の計算で支払います。

例えば、一般的な事業で労働者が得ている賃金総額が200,000円だった場合、

労働者の雇用保険負担額は

200,000×0.003(3/1000)=600円

対して事業主の雇用保険負担額は

200,000×0.006(6/1000)=1,200円

となります。

また雇用保険は通常の月ごとの給与の他に賞与支給の場合も支払いの対象となります。


雇用保険でもらえる給付・手当の種類


求職者給付

求職者給付には一時的に働けなくなったり失業した際に、再就職に向けて様々な支援を行う制度です。

失業中の生活支援や、再就職のための技能習得支援など一つ一つの制度を見ていきましょう。


基本手当

いわゆる失業手当のことで被保険者が何らかの理由で失業した後、求職活動をしている一定の期間中に基本給付が支給されます。

【受給資格】

①ハローワークに来所し求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思がありいつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就くことができない「失業の状態」にあること。

②離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。


①について簡潔に言うと「働ける状態で働く意志があるのに失業している状態」を指します。

「病気やケガで働けない方」

「妊娠・出産・育児などで働けない方」

「結婚などにより家事に専念しすぐに就職する気がない方」

「定年退職などですぐに再就職する気がない方」などはこれに当たりませんので対象外となります。

②の保険者期間の1ヶ月分とみなす基準は、離職日から1か月ごとに区切っていた期間ごとに賃金支払の基礎となった日数が11日以上または80時間以上となる必要があります。

また特例として、特定受給資格者(解雇・倒産など会社都合の失業)や特定理由離職者(雇い止めによる失業)など特別な理由がある場合は、離職以前の1年間に加入期間が6カ月以上であれば良いこととなっています。

【受給期間】

基本手当の受給期間は被保険者期間や離職理由、年齢に応じて90日~360日の間で決定します。

【受給金額】

離職前にもらっていた給与額や年齢によって支給額が決定します。

離職前の6ヶ月間にもらっていた給与総額(賞与や退職金は含めません)を180で割り賃金日額を割り出します。これを基本手当日額といいます。

この基本手当日額に年齢に応じた給付率50~80%(60歳以上~65歳未満の方は45~80%)を乗じた額が支給額です。


技能習得手当(受講手当、通所手当)

技能習得手当は求職者がスムーズに就職活動ができるよう就職に役立つ専門的知識・技術を習得するために、公共職業安定所長の指示にしたがって公共職業訓練を受講した場合に支給される手当のことです。

この手当は基本手当とは別に支給されます。

【受給資格】

①基本手当を受給していること

②求職活動を行っていること

【受給金額】

受給できる手当には受講手当と通所手当があります。

受講手当は職業訓練を受けた日、1日につき500円が支給されます。受講手当の上限は20,000円です。

通所手当は自宅から職業訓練を受ける場所までの移動のためにかかる費用が支給されます。

通所方法によって金額に差がありますが、最高で42,500円まで支給されます。


寄宿手当

寄宿手当は上記技能習得手当の通所手当に似たもので、職業訓練を受けるために家族と別居して生活する場合に支給される手当です。

当てはまる条件として

通常の交通機関を利用して通所するための往復所要時間がおおむね4時間以上であるとき。職業訓練受講給付金を受けていること

②交通機関の始(終)発などの便が悪く、通所に著しい障害を与えるとき。

③訓練を受講する訓練施設の特殊性によって寄宿を余儀なくされるとき。

など遠方であったり、寄宿が必要であるとハローワークに判断された場合となります。

支給金額は最大で月額10,700円です。


傷病手当

離職後、怪我や病気のために働けない状況になった場合に支給されます。

求職活動をできない期間が15日未満のときは失業保険、15日以上のときは傷病手当が支給されます。

支給額・期間については最長で4年を限度とし

基本手当日額に年齢に応じた給付率50~80%(60歳以上~65歳未満の方は45~80%)を乗じた額が支給額です。

年齢・もらっていた賃金額によって支給額に上限がありますので注意が必要です。

また健康保険にある傷病手当金や労災保険にある休業補償給付と併用して受給することは出来ません。


就職促進給付

就職促進給付には失業者が再就職後に受給期間が規定の日数分が残っている人を対象とし様々な受給を受けられる制度があります。


再就職手当

再就職手当は上記の基本手当を受けている方が「1年を超えて雇用される見込みのある仕事」についた場合

基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あった場合に支給されます。

計算方法としては「支給残日数×給付率×基本手当日額(上限あり)」となります。

上記計算式の給付率には支給残日数3分の2以上の人:70%、支給残日数3分の1以上の人:60%を入れて計算します。


職業促進定着手当

就業促進定着手当は上記の再就職手当の支給を受けた方で、再就職先に半年以上雇用されたとき、

再就職先での半年間の賃金日額が離職前の賃金日額と比較して低い場合に支給されます。

支給額は基本手当の支給残日数の40%(※)を上限として、低下した賃金の6か月分を支給されます。

※再就職手当の給付率が70%の場合は30%


就業手当

就業手当は失業保険の受取期間を一定期間以上残して、臨時的な「就業」をした時に受け取れる手当です。

1年以上を超えて雇用される見込みのある仕事の場合は再就職手当が支給されますが、就職先が1年未満の契約となってしまった時に受け取れるものが就業手当です。

計算方法としては就業日×30%×基本手当日額が支給されます。

【受給条件】

①契約期間が7日以上

②週の労働時間が20時間以上

③1週間に4日以上働く


常用就職支度手当

常用就職支度手当は体に障がいがある方等一定の要件を満たす就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に支給されます。

計算方法としては基本手当日額×給付残日数(45~90)×40%が支給されます。この手当は再就職手当と合わせての支給はされません。


移転費

移転費は公共職業安定所の紹介による就職、または公共職業安定所の指示による公共職業訓練等を受けるため、

移転を余儀なくされた場合にその移転にかかる費用が支給されます。


求職活動支援費(広域求職活動費、短期訓練受講費、求職活動関係役務利用費)

求職活動支援費は、広範囲に渡って求職活動を行う際に支給されるものです。

受給手続きを行っているハローワークの紹介で遠方の求人事業所へ求職活動を行う際にもらえる広域求職活動費、

ハローワークの職業指導により短期間の職業訓練を受けた際にもらえる短期訓練受講費、

面接を受けるために子供を預けるなどのサービスを利用した場合にもらえる求職活動関係役務利用費などがあります。

それぞれ受給には条件がありますので詳細はハローワークなどで訪ねてみると良いでしょう。


教育訓練給付

教育訓練給付にはキャリアアップのために技術習得訓練を受ける場合に様々な給付が受けられる制度です。


教育訓練給付金(一般教育訓練給付金・専門実践教育訓練給付金)

一定の条件を満たす雇用保険の被保険者(在職者)または被保険者(離職者)が

厚生労働大臣の指定する一般教育訓練または専門実践教育訓練を受講し終了した場合

支払った費用の一部が支給される制度です。

意外に知られていませんが、失業者だけではなく在職中のスキルアップにも活用することが出来ます。

支給額については各給付金で計算式が異なりますので詳細は厚生労働省のサイトでチェックしてください。


雇用継続給付

雇用継続給付は様々な事情で働けない方に対して所得を保証する制度です。


高年齢雇用継続給付

年金支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことを受けてその間の賃金の低下を補うための給付金です。

通常60歳で定年だった企業で65歳まで継続して雇用される場合、企業によって様々ですが定年以前よりも賃金が低下するのが一般的です。

高年齢雇用継続給付はその低下分を補うための制度で

支給額は所得によって上限・下限がありますが計算方法としては


・賃金低下率が61%より大きく75%未満の場合

60歳以降の毎月の賃金×一定の割合(15%~0%)

・賃金低下率が61%以下の場合

60歳以降の毎月の賃金×15%


となります。 


介護休業給付

被保険者の家族(配偶者、父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、子、孫)が常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)

が必要になった際に介護休業給付介護休業給付(同じ家族につき93日を限度に3回まで)が支給されます。

※93日×3回ではありません。93日を限度に分割できるのが3回までという意味ですので注意してください。

支給額は所得によって上限・下限がありますが計算方法としては

「休業開始時賃金日額(介護休業開始前の6カ月分の賃金÷180)×支給日数×67%」となります。


育児休業給付金

産前・産後休暇取得後に、引き続き育児休業を取得する場合に育児休業給付金が支給されます。

支給額は所得によって上限・下限がありますが計算方法としては

「休業開始時賃金日額(産休前の6カ月分の賃金÷180)×支給日数×67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)」となります。

育児休業期間中は社会保険料は免除されます。


以上が給与から引かれる雇用保険の活用法になります。

かなり多くの給付制度があることに驚かれたのではないでしょうか。

雇用保険は負担する金額が少額なのに、多くの補償制度がありとても大きなセーフティーネットになっています。

ただし、注意点として基本的に上記の給付は自分自身で申請などを行わないと支給されないものなので

申請を忘れてしまっていたり存在自体を知らなかった場合、最悪支給を受けられず損をしてしまいます。

全てを覚えるのは難しいですが、お仕事をする上で困ったときは何か対象となる制度が無いか

調べる癖をつけておきましょう。



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