『ベンチャー企業』という言葉、普段から耳にすると思いますが、「どんな企業なの?」って聞かれたら貴方はちゃんと説明することができますか?

また就職先を考える際、「大企業とベンチャー企業、自分はどっちの方が向いているのかな?」って悩む人もいるのでは?

ここでは一般的な中小企業や大企業と比べながら、「ベンチャー企業とはどういう所か?」や、「ベンチャー企業の将来性」について考えてみたいと思います。

※ただし、ベンチャー企業とひと口に言っても実は様々なので、ここでは大きなイメージを捉えるだけにしましょう!


1.ベンチャー企業とは?

経済産業省は2014年に行われた『ベンチャー有識者会議』で、ベンチャーの意味を次のように言い表しました。

「ベンチャーとは、新しく事業を興す『起業』に加えて、既存の企業であっても新たな事業へ果敢に挑戦することを包含する概念である。」と。簡単に言ってしまえば、『新しい事業を起こす企業』っていうことです。

ベンチャー企業に明確な基準や定義はありません。でも、経済産業省が調査した際には以下の基準を設けたようです。

①原則として設立10年未満であり、従業員100名以下の企業。さらに以下②~⑧のいずれかに該当する企業。

②独自の製品技術やビジネスモデルを持っている企業。

③特許・実用新案を取得、または申請中の企業。

④新しい市場の開拓を目指している企業。

⑤株式公開を計画中の企業。

⑥指定ベンチャーの認定を受けている企業。

⑦各種のベンチャー賞をもらった企業。

⑧ベンチャーキャピタルなどの投資機関から出資を受けている企業。

※引用元:経済産業省、平成19年度創業・起業支援事業ベンチャー企業の経営危機データベース ~83社に学ぶつまずきの教訓~


ベンチャー企業とよく混同されがちなのが『中小企業』です。中小企業は、中小企業基本法によって資本金や従業員数などを定義されている企業のことです。 例えば、サービス業なら出資総額が5千万円以下または常時使用する従業員数が100人以下の会社および個人、というように。

『ベンチャー企業』というと一般的に従業員数が少ないイメージがあるので、『中小企業』と似たようなものだろう、と思われがちです。しかし、実際には違います。何が違うかというと、それはビジネスモデル(儲けるための仕組み)です。

中小企業は既存のビジネスモデルを扱っています。これに対しベンチャー企業は、新しいビジネスモデルを自分達で作ってそれを事業内容としています。


2.ベンチャー企業のメリット・デメリット

ベンチャー企業は、そのほとんどが成長の階段を上っている途中にあります。会社の方針を決めて、継続的に利益をあげながら経営基盤を固めている最中なのです。すると、そこにはおのずとメリット・デメリットが存在します。それを『中小企業・大企業』との比較で見てみましょう。

※以下はあくまで、各項目を一般的な傾向としてざっくりと表したものです。だいたいのイメージとしてとらえてくださいね。(◎…非常に良い、○…良い、△…まあまあ、×…良くない)


【安定性は?】 ベンチャー企業…× 、中小企業・大企業…○~◎

※ベンチャー企業の中でも、設立からの年月が長くなるほど事業は継続できているので、安定に向かっていると言えるでしょう。しかし設立当初や成長過程の時期には、資金面で苦しい思いをしている所は決して珍しくありません。


【給料は?】 ベンチャー企業…△ 、中小企業・大企業…△~◎

※ベンチャー企業は成果主義を採用している企業が多いため、業績が良ければ高い給料をもらえる可能性はあります。しかし経営が軌道に乗るまではあまり期待できません。

※大企業は利益が大きく安定しているため、平均して給料は高めであることが多いようです。


【福利厚生は?】 ベンチャー企業…×、中小企業・大企業…△~◎

※ベンチャー企業は整っていないことが多いようです。

※充実しているのは、やはり大企業です。


【裁量の大きさは?】 ベンチャー企業…◎、中小企業・大企業…〇~×

※ベンチャー企業は少人数で事業の運営を行っているので、若い社員でも裁量の大きな仕事を任せてもらえる傾向にあります。

※反対に大企業は、組織や業務の流れが固まっているので、裁量は小さい傾向にあります。


【昇進は?】 ベンチャー企業…◎、中小企業・大企業…〇~×

※ベンチャー企業は社員数が少なめで評価されやすい傾向にあるため、昇進のスピードは早いかもしれません。

※歴史のある中小企業や大企業は、年功序列の昇進制度が残っていることが多いため、昇進のスピードは遅いかもしれません。


3.今後、ベンチャー企業の活躍が期待される業界

①IT関連

IT業界は資金力が無くても他社には思いつかないようなアイデアがあれば、のし上がっていける業界だと言われています。そのため、クリエイティブな才能やスキルに自信を持っている人達が、勝負をかけるために立ち上げたベンチャー企業の数は、日ごとに増しています。Webサービス・ITサービス・ソフトウェアの開発などといった事業を展開しているベンチャー企業が特に目立ちます。

ITベンチャー企業で求められるのは、即戦力になれるような幅広い知識やスキルを持っている人材です。特に〈注1〉ITエンジニアと呼ばれる人達は引く手あまたです。どこも人や資金があまり豊かではないため、新人を育てている余裕がないのです。従って即戦力を欲しがっています。

〈注1〉ITエンジニアは、コンピューターを動かすためのシステムを設計することが主な仕事です。といってもその職種は様々で、「システムエンジニア」や「プログラマー」ならば聞いたことがあるかと思います。その他にも「ネットワークエンジニア」「サーバーエンジニア」など、それぞれ専門分野に分かれています。


②医療・ヘルスケア関連

いっそう深刻になってきている少子高齢化社会の問題や、健康意識の高まりがもたらす社会的ニーズによって、縮小傾向にある他の市場とは反対に、成長が大いに期待できる分野であります。こうした世の中の流れから、いろいろなベンチャー企業も生まれています。「創薬」「治療」「医療機器」「予防」「介護・生活支援」など、考えなければならない課題や解決しなければならない問題は、本当に山積みです。

●創薬…従来の化学合成による創薬の他に、バイオ医薬品なども注目されるようになりました。この分野は上場を果たしている大学発の創薬ベンチャー企業が多数存在しています。

●治療…遺伝子治療や再生医療など、新しい治療法を研究・開発しています。こちらも大学発のベンチャー企業が、高度な研究や技術開発などを行っています。

●医療機器…AIを活用した精度の高い診療結果が得られる検査機器などを開発しています。やはりここでも、大学発のベンチャー企業が目立っています。

●予防…健康の増進や維持・重症化の予防・介護予防などを目的とした機器やサービスを提供しているベンチャー企業に期待が寄せられています。

●介護・生活支援…一人暮らし高齢者の毎日の生活に異変が起きていないかを見守ったり、日常生活を送るのに軽い支障のある高齢者が、普段の生活を快適に過ごすための機器の開発に力を尽くしています。

「医療・ヘルスケア関連」は今後の課題や問題が多い代わりに、国もその状況を認識しておりベンチャー企業への支援を強化しています。転職を考えている人にとっては将来性のある分野だと言えます。社会貢献や仕事のやりがいを求める方はぜひ!


③環境保護関連

「知らない人はいないのでは?」と言ってもいいくらい、現代の環境問題は世界中で話題になっています。この流れにより、国内のベンチャー企業の数も増えてきています。再生可能エネルギーの開発や、環境保全についての解決策を提供できるベンチャー企業が、活躍する時代になってきました。


Q:環境保護を扱うベンチャー企業の仕事とは?

A1:研究開発(環境保全エンジニア)

『環境保全エンジニア』が所属している組織は、機械メーカー・研究機関・環境調査会社など様々。それぞれの所で、環境保護に役立つ機器や技術を開発することが、その仕事になっています。

A2: 生産技術

『環境保全エンジニア』が開発した製品を、どのようにしたら効率的かつ高品質に生産できるかを考え、現場の改善を行っていくのが『生産技術』の仕事です。

A3: 営業・マーケティング

『環境保全エンジニア』と『生産技術』が製品化した商品を、効果的に売り出していくのに必要な部署が『営業・マーケティング』です。どんなに優秀ですばらしい製品ができても、それを売る人がいなければ世の中に広まっていくことはありません。また、「その製品をどのような状況でどう使えば役に立つのか」など、解決の方向へ導いていくのがマーケティングの仕事です。ベンチャー企業は、大手企業以上にアピールを強めていかなければならないという意味で、営業・マーケティングの仕事がとても大切になります。


4.どのような人がベンチャー企業に向くのか?

ベンチャー企業は、一般の大企業や中小企業とは社風も組織の在り方もまったくと言っていいほど異なります。そのため、合う人にとっては水を得た魚のように生き生きと働ける場所になりますが、合わない人にはとても辛くて居づらい場所となります。「人により、向き不向きがハッキリと分かれるのがベンチャー企業である。」と言っても過言ではないでしょう。では、どのような人が合うのでしょうか?


①即戦力となれる幅広い知識やスキルを持っている人

これは『IT関連』の所でも述べた通りです。ベンチャー企業は人や資金がそれほど豊かではないため、人を育てる余裕がありません。なので実力次第で、年齢や社歴に関係なく重要な仕事を任せてもらえる可能性があります。


②チャレンジ精神が旺盛な人

ベンチャー企業は、その業界にとって新興勢力的な存在であるため、いつもチャレンジし成長を続けていないと、生存競争に勝ち残ることができません。そのため積極性と主体性が求められるのです。安定志向の人や、指示を待ってから動くのが常態化している人には、厳しい環境であると言えます。


③チームワークを大切にできる人

しかし、即戦力となれる実力の持ち主であっても、チャレンジ精神旺盛な人であっても、周りのことを考えずに個人プレーに走ってしまう人はベンチャー企業には向きません。なぜなら、ただでさえ社員数が少ない中、皆で支え合っていかないと、仕事がスムーズに運んでいかないからです。チームワークが悪くなると、仕事のパフォーマンスが落ちます。すると、それがきっかけで社内の雰囲気も悪くなり、人間関係が壊れていく可能性があります。それはすなわち、業績の悪化と会社経営の危機にも直結します。大企業であれば、配置転換等で問題解決が図れるかもしれませんが、少人数のベンチャー企業ではなかなかそうもいきません。それゆえ、チームワークを大切にできる人が求められるのです。(しかし、チームワークはベンチャー企業に限らずどんな組織でも大切ですけどね。)


5.最後に

今回は、ベンチャー企業のお話をひと通りさせていただきましたが、いかがでしたか? 貴方はベンチャー企業向き?ご自身をよく見つめ直して、就活する際の会社選びのヒントになれば幸いです。

それでは頑張ってくださいね、応援しています。 フレー! フレー!